埼玉県医療的ケア児等
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かけはし

医療的ケア児支援知識・技術
-口腔・鼻腔吸引-

痰や鼻水、よだれが口や鼻の中に溜まってしまい、自分で外に出しにくい場合は、吸引が必要になります。1歳までは主に鼻呼吸です。痰や鼻水、よだれが喉の奥に落ちてしまい、呼吸がしにくくなることや、間違って肺に入ってしまうことがあります。楽に呼吸ができるように、吸引をしてあげましょう。
乳児イラスト

準備

1.必要物品の準備

  1. 聴診器
  2. ポータブル吸引器 (ここではパワースマイル®で説明します)
    パワースマイル
    図1 パワースマイル®
  3. 吸引カテーテル
  4. アルコール綿やティッシュなど、チューブを拭くもの
  5. 通水用の水(水道水で可)
  6. ふた付き容器2つ(吸引チューブ通水用と保管用)

2.吸引体勢を整える

  1. 手をきれいにしましょう。
  2. 聴診器で胸の音を聞き、ブツブツという音がどこで聞こえるか確認します。もしくはお子さまの胸に手を当ててみてください。痰が溜まっている部分から微細な振動が手に伝わってきます。
  3. 吸引器に吸引カテーテルをつないだあと、電源を入れて作動するか確認し、吸引圧が合っているかを確かめましょう。吸引チューブの接続部分を折り曲げると吸引圧が分かります。
    ★ポータブル吸引器の圧は、吸引物の性状によって調節しましょう。 目安として口鼻吸引は20~30kPaです。
  4. 体勢を整えましょう。手足の動きが激しいときはバスタオルでくるむとよいでしょう。
  5. 吸引チューブの挿入長を確認します。
    《口腔内吸引》
    口角から耳たぶ
    《鼻腔吸引》
    鼻腔から耳たぶ

吸引方法

1.吸引してみましょう

  1. 利き手で吸引カテーテル挿入の長さ+2~3cmの位置を持ちます。反対の手の親指でカテーテルを折り曲げて、吸引圧がかからないようにします。
  2. 吸引カテーテルを折り曲げたまま、口または鼻の孔から挿入します。(挿入するときは吸引圧が掛からないようにします)
  3. 折り曲げていた親指を放すと、分泌物が吸引されます。くるくると回しながら吸引カテーテルを上に引き抜きます。
    呼吸が苦しくならないように、1回の吸引時間は10秒以内が好ましいです。吸引をする時に息を止めて確認してみると良いでしょう。
  4. 聴診器で胸のブツブツした音を確認するか、手で胸を触わり、吸引前にあった音や振動が消えているかを確認します。
  5. 痰やよだれが多いときや痰の粘り気が強く、1回で十分に吸引できない時は、繰り返し吸引を行います。(呼吸が苦しそうな時は、少し間隔をあけて、落ち着いてから行います。)

2.観察しましょう

  1. 吸引物が普段より黄色や緑色で汚く、ネバネバとしていなかったか。
  2. 吸引回数がいつもより多くないか。
  3. 吸引後に顔色がわるくなっていないか。

→対応方法は、「こんなときは・・・」の項目を参照して下さい。

3.片付けましょう

  1. 吸引カテーテルをアルコール綿またはティッシュなどで拭き、通水用の水を吸って、吸引カテーテル内の痰や鼻水をポータブル吸引器内に流しましょう。
  2. 吸引カテーテルに付着している水滴を、アルコール綿またはティッシュなどで拭き、ふたつき容器に保管します。
  3. 通水しても吸引カテーテルや延長のチューブ内に痰が残っているときは、交換や洗浄を行ってください。
  4. ポータブル吸引器の電源を切り、後片づけをしたら、手をきれいに洗います。
    吸引後カテーテルを拭いているつもりでも、通水用の水は細菌汚染(常在菌含む)されます。通水用の水は毎回取り換えることが理想ですが、最低でも1日1回は取り換えましょう。
    看護師

使用物品の消毒・交換

1.消毒

消毒前に食器用洗剤で洗い、
有機物を落とす
ミルトン®などに1時間つけおく
乾燥

1日1回、消毒を行うもの

  • ①吸引チューブ
  • ②ふた付容器2個
  • ③延長チューブ
  • ④吸引ビン
*ポータブル吸引器で外して洗えるところは毎日洗浄しましょう。

2.交換

  1. 吸引チューブ:硬化や破損した場合。
  2. 延長チューブ:汚れが取れない場合。
  3. 吸引器:吸引圧がかからなくなったら、業者に連絡しましょう。

「こんなときは・・・」

分泌物が引けない!
1.吸引器の圧はあがっていますか?

【対応】

①吸引器のチューブ先端をさわり、吸引圧がかかっているか確認。

②電源やバッテリーの状態も確認。

2.分泌物が粘調ではありませんか?

【対応】

①吸入器を持っているのであれば、加湿のために、(沸騰後に冷ました)白湯で吸入する。

②口腔ケアを行い、口腔内を湿らす。

③摂取する水分量を増やす。

④うつ伏せにしてみる。(鼻や口が塞がらないように注意する)

⑤入浴後は加湿されやすいです。

⑥部屋の室温、湿度調整。

肺のグーグーやプツプツ音がとりきれない!
1.鼻づまりの音ではありませんか?

【対応】

下顎を拳上して消失するグーグーした音であれば、分泌物ではありません。呼吸が楽になる姿勢にしてみましょう。

2.分泌物が粘調ではありませんか?

【対応】

「分泌物がひけない!」の2と同様の対応をしましょう。

3.肺の奥深いほうに分泌物がある可能性があります。

【対応】

プツプツする音が上側になるように横向きの姿勢にしたり、うつぶせにする(鼻や口が塞がらないように注意する)など、姿勢を変えてみましょう。

血性のものがひけた!
1.吸引圧が高い、もしくは吸引チューブで粘膜をつついて傷つけていませんか?

【対応】

血液は鼻汁や唾液と混じって多く見えます。吸引圧を下げて、1回の吸引時間を短くすることで対応しましょう。出血量が増えて、連日出血が続くようであれば受診しましょう。

吸引したら顔色が悪くなった!
1.一時的な低酸素状態です

【対応】

人工呼吸器を使用していない場合は、顔色や唇の色、モニターのSpo2値の自然回復を待ちましょう。回復が悪いときは、アンビューバックを使用して呼吸を補助しましょう。人工呼吸器がある場合は、装着して様子をみます。
次回吸引時は、吸引時間を短縮して様子観察を行い、酸素濃縮器を持っている場合は酸素の流量を上げて対応してみましょう。

嘔吐した!

【対応】

嘔吐直後は体を横向きにし、誤嚥を防ぎます。口腔内に嘔吐物があれば軽く吸引し、除去しましょう。次回からは、
①食後や注入後の吸引はさける。どうしても必要な時は10秒よりも短い時間で行う。
②チューブを通常よりも浅く(短く)挿入する。を心がけましょう。

049-225-5770

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