医療的ケア児支援知識・技術
-胃管からの注入-
胃管チューブの挿入方法
1.必要物品を準備します
- 胃管(NG)チューブ(栄養カテーテル)
- 紫色シリンジ1本
- 聴診器
- カテゼリー1つ
- 固定用テープ
- ハサミ・マジック
成長に合わせて胃管チューブのサイズは変わります。
サイズの目安は、
1歳まで:3~8Fr
乳幼児:8~10Fr
学童以上:10~16Fr
「小児科診療マニュアル~すべての研修医のために~医学書院P178」より
2.前回のチューブを抜きます
- 前回の注入から間隔が空いている朝や注入時間の前にチューブ交換は行いましょう。
- 手をきれいにします。
- 貼ってあるテープは剥がしやすいように、水などで濡らします。テープが顔の皮膚と平行になるように、そっと剝がします。
- チューブをゆっくり抜きます。
- テープの粘着物が皮膚に残らないように拭きます。
(入浴中に剥がしても構いません) - テープで固定されていた皮膚をほぐすようにマッサージしてあげるとよいでしょう。
3.胃管チューブを挿入します
- 手をきれいにします。
- 固定用のテープを用意します。
(太いものと細いもの1本ずつ、必要に応じて仮固定用1本) -
胃管チューブの挿入する長さを決めてマジックで印を付けます。
◆胃管チューブ挿入の長さの決め方◆
- 仰向きで顔を正面に向けたあと、顎を少し上に向けて、片手で頭が動かないように支えます。支えるのが難しい場合は、他の人に協力してもらうか、バスタオルでくるみ、手が出ないようにします。
-
胃管チューブを印のところまで挿入できたら、テープで仮止めします。
挿入時に抵抗がある時や、むせ込み、顔色が悪くなった時は無理に行わず、一度、胃管チューブを抜きます。状態が落ち着いてから再度入れ直して下さい。
-
胃管チューブの挿入位置を確認します。紫シリンジに空気(5mL程度)を入れた後、胃管チューブにつなげます。聴診器をみぞおち辺りに当て、勢いよく紫シリンジを押して空気を送ります。この時、聴診器から“グーっ”という音(気泡音といいます)を確認します。続けて左右の肺辺りに聴診器を当て、シリンジで空気を送り、音が聞こえないことを確認します。
(気道に誤って胃管チューブが入った場合、空気を送ることで音がします)
次に、胃に入れた分の空気を引きます。(空気が胃の中に残るとお腹が張って苦しくなり、嘔吐の原因になります)その時、透明の液や前回注入したものが一緒に引けると、胃管チューブの先端が胃の中に入っている確認になります。
※泣いていると音が聞こえにくいので、泣き止んでから行ってみましょう。 - 挿入されていることが確認できたら、胃管チューブをテープで固定します。テープの角を丸く切り、Ωに貼るとはがれにくいです。
★ 鼻から挿入の場合、交換毎に左右交互に入れ替えるのが望ましいです。
★ テープを固定する位置は毎回少しずつ変えましょう。皮膚トラブルを防ぐことができます。
胃管チューブを真っすぐ入れると、鼻の奥に当たります。直角を描くイメージで挿入してみましょう。「ごっくん」を待ってからチューブを進めると入りやすいです。
「こんなときは・・・」
たくさんの空気が引けてくる場合
胃管チューブ挿入の長さが浅いことや、口や喉でとぐろを巻く、途中で折り返る(Uターン)ことで胃内に入っていないことが考えられます。一度、胃管チューブを抜いて、もう一度入れ直して下さい。シリンジを押すと抵抗がある場合
胃管チューブの折れ曲がりや詰まりの可能性があります。折れ曲がりの場合は、少し引き抜いてから入れ直すと戻ることがあります。詰まりの場合は、細めのシリンジにお湯を入れて数回に分けてプッシュしましょう。それでも詰まりが取れない場合は新しいものと交換します。注入方法
1.必要物品を準備します
- 聴診器
- 紫シリンジ2本(胃残確認用と通水用)
- 経腸栄養注入セット
- ミルク・栄養剤・ジュース・スープなど注入するものは皮膚温より少し暖かい程度に温めておきます。冷たすぎたり、温かすぎたりすると、下痢や胃の粘膜を傷つける原因になります。
2.注入前に環境を整えます
-
オムツ交換や痰の吸引を済ませ、姿勢を整えましょう。バスタオルやクッションなどで上半身を高くすると、嘔吐や胃食道逆流の防止になります。
ごはんの匂いをかがせてあげることで五感が刺激されます。また、抱っこやアイコンタクトなどのスキンシップで、愛着形成もすすみます。
3.注入をします
- 手をきれいにします
- 胃管チューブの挿入の長さ(マジックの印が鼻の入り口または口の角にあるか)、テープの固定が緩んでいないかを確認して、必要があれば再固定しましょう。
-
胃の中にチューブが入っているか確認しましょう。
- (1)シリンジで空気を入れた時、みぞおちのあたりで“グー”という音(気泡音)が聞こえましたか。また、肺の位置では音が聞こえませんでしたか。
- (2)シリンジを引いたとき、透明の液や栄養剤が引けましたか。
-
栄養注入セットのクレンメ(滴下速度を調節する部分)が閉まっているか確認しましょう。その後に栄養注入セットに栄養剤を入れます。
新しく栄養チューブの袋をあけたときはクレンメが開いているので要注意です。
- 栄養注入セットを滴下が確認できる高さの場所に掛けます。(約50cm上)
- 滴下筒(滴下数を確認する部分)を2~3回軽く押して、栄養剤を1/2~1/3程度ためます。
-
クレンメをゆっくり開き(上に回転させる)栄養注入セットのチューブの先端まで栄養剤を満たしたら、クレンメを閉じます(下に回転させる)
クレンメを全開にすると、勢いよく流れ出てしまいます。チューブ内をゆっくり流れる程度に上に回転させましょう。*胃管チューブに栄養注入セットをつなぐ前に内服薬を入れても良いです。
-
栄養注入セットを胃管チューブに接続後、クレンメをゆっくり上に回転させて、注入を始めましょう。
注入量×15滴(15滴で1㎖分になる)/注入時間(分)=1分間の滴下数
例)ミルクの注入量120mlを30分で注入する場合→120×15/30分=60滴1分間に60滴(1秒に1滴落とす)計算になります。
★計算して出た滴下数を6で割ると10秒間の滴下数が出ます。その数字を割り切れるまで割ると、滴下を合わせやすくなります。
例)10秒で10滴→1秒で1滴、
10秒で5滴→2秒で1滴 など -
注入が予定量入っているか適宜、確認しましょう。(15分後に1/4は注入されているなど目安を作っていると良いです)啼泣や緊張、体動きで滴下の速さが変わってきます。
注入が終わるまでは、咳やSpo2アラームが聞こえる場所にいましょう。
- 栄養注入セットが空になったら、クレンメを全開にしてチューブ内に残った液体もすべて注入します。クレンメを閉じてから胃管チューブから栄養注入セットを外します。
- 乳児のうちは胃の形態上、嘔吐やいつ乳を起こしやすいため、注入終了後30分~1時間は頭を高く起こした姿勢が好ましいです。
使用物品の消毒・交換
使用物品は食器用洗剤で洗った後、1時間程、ミルトンなどの消毒液につけます。熱めのお湯を使うと油分が落ちやすいです。
呼吸状態の観察
嘔吐や注入中・後に咳をしている場合は誤嚥をしていないか確認する為に肺の音を聴診しましょう。正常の呼吸はシューシューという音で聴きにくく、慣れるまでは無音に聞こえるかもしれません。普段から寝ている時など落ち着いている時に聴診器で呼吸音を聞いておきましょう。
「こんな時は・・・」
栄養剤が落ちない
泣いている時や緊張が強いとお腹に力が入り、栄養剤が落ちなくなります。いったん注入を止めて、抱っこやトントンなどで落ち着いた後に再開しましょう。滴下させようとしてクレンメを全開にしていると、お腹の力が緩んだときに早く注入されてしまうので注意しましょう。胃残の確認をしたらミルク様のものが多く引けた
胃から吸引されたものが茶色や緑色交じりでなければ、再びシリンジで胃の中に戻してあげてください。30分待って、もう一度確認します。それでも注入量の10%以上引ける場合は差し引き注入しましょう。(差し引き注入=シリンジで引けた分を胃に戻します。新しく注入する量から、胃から吸引された量を差し引いた量を注入します) (注入予定量)-(胃残量)=(注入する量) *胃残が多い時間が決まっている場合はその時間の量を少なくし、他の時間にふりわけてみましょう。注入量は1日のトータル量で考えて構いません。 *どの時間も胃残が多い場合は,消化機能が落ちており、体調不良が考えられます。受診して注入量や内容について医師に相談しましょう。胃残に血液(茶色い塊)が混ざっている
少量の血液では、特に問題はありません。胃から吸引したものは捨てて、通常通りの量を注入してください。胃から吸引するたびに血液や茶褐色の液体が引けるようであれば、医師の診察を受けましょう。胃残が緑色をしている
胃管チューブが深く挿入されていることも考えられるため、チューブ挿入の長さを確認しましょう。チューブの長さが合っている場合は、お腹が張っていないか、便が出ているか、吐き気がないかの確認をしましょう。続くようなら医師の診察を受けましょう。注入中に咳込み、栄養剤が口や鼻から出てきた
すぐに注入を止め、口や鼻の吸引を行います。落ち着いてから肺の音を聞きます。 ①いつもと違うプツプツした音が聞こえ、熱が出てきた→受診しましょう ②普段と体調は変わらない→もう一度チューブの長さを確認し、上半身を起こす姿勢(座らせるなど)で注入を再開しましょう。注入中に胃管チューブが抜けてしまった
すぐに注入を止めましょう。胃管チューブが抜けかけている場合は、注入を止めた後に全て抜きます。そして、顔色や機嫌を見ます。また、聴診器で肺の呼吸音を聞いてみましょう。いつもと違うプツプツした音が聞こえ、元気がなく、熱もあるようなら肺炎の可能性があります。すぐに病院に行きましょう。胃管チューブの詰まり、フタが閉まらない
新しい胃管チューブと交換しましょう。注入時以外に胃管チューブが抜けた
ミルトン®液等で消毒し、乾燥させておきます。注入時間になったら、再度、挿入します。いつもと違う音の時はお子さんの様子も観察しましょう。